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AI時代の歯科治療

2017年12月6日

理研が設置したのAI用スーパーコンピューター

日本経済新聞(2017/12/5)の夕刊に「AIなど高度IT 学び直し支援  雇用保険から助成 成長分野の即戦力に」という記事が掲載されました。それによると2020年にはAIなど先端技術を持つITエンジニアが4.7万人も不足するというのです。
最近AIの目覚ましい発達が話題になっています。碁や将棋、チェスのようなゲームで人間はもはやコンピューターに勝つことはできません。AI時代になると人間の仕事はなくなって失業者が大量に出るという懸念が報道ばかりが目立つ中で、AIを操る人材が大幅に不足するというのはある意味奇妙な話です。
AIやIT技術の発展で何もかもが変わろうとしています。その中で歯科治療はどうなるのでしょうか。歯医者などもはや不要になり、AIが診断し、ロボットが治療を行うようになるのでしょうか。それともAI技術者が不足するように歯医者はAI時代に必要とされる人材なのでしょうか。

AI時代にはロボット歯医者が登場?

結論から言えば、歯医者だけでなく歯科衛生士、歯科助手の仕事をそのまま代行するようなロボットの開発はまったく目途がたっていないというのが実情です。ロボットは決められた仕事を行うのは得意ですが、細かく複雑で一つ一つがバラバラな作業をするのはとても苦手です。
歯医者だけでなく、日常の家事仕事の洗濯物をたたむ、アイロンをかけるといったことをしてくれる家電製品はありません。衣類はバラバラで形も大きさも違うのでこういった作業はロボットにとってはとてつもなく高度なものになってしまうのです。

汎用のアイロンがけロボットはない

掃除機では最近はロボットタイプの自動掃除機が使われるようになってきましたが、ロボット掃除機を効率よく使うためには、障害物を片付けておく、家具の配置を変えるといったことが必要になります。
AIを操るAI技術者が不足するといった話からも分かるように、ロボットやAIは決められたルールがなく、ルール自体を作るようなことは不得手というよりほとんど不可能です。碁や将棋はとても頭を使うゲームですがルールはきちんと決まっています。
碁の名人をAIが打ち負かしたといってもそれは、ブルドーザーが横綱より力があるという意味でしかありません。いくらブルドーザーに力があっても、ビール瓶を開けることができないように、細かい様々な作業ができるかどうかは別の話なのです。
歯科治療は細かく、本当の意味で決まり切った作業は何一つないと言ってもよいほどです。アイロンがかけられないロボットは歯医者だけでなく、歯科衛生士の仕事も、歯医者と一体となって治療を行う歯科助手の仕事もできないでしょう。

歯科治療はロボット化が難しい

それでは、歯科技工の仕事はどうでしょうか。「CADCAMか人間か: セレックで技工の将来を考える」で書いたように、技工物用に一度コンピューターで形を決めて、あとはセラミックを削り出すだけといった作業を見ると、人間とコンピューターの間に越えがたい壁があることが改めてわかります。

コンピューターで画像処理をしたものを削り出すことはできるが・・

いくら型取りをうまく行っても、コンピューターの指示通り削り出された技工物は微妙な不適合があります。不適合のかなりは歯医者が調整しますが、1ミリの何分の1かのズレを人間は見逃しません。あるいは気が付かなくても技工物がきっちりと適合させるには最新のコンピューター技術でもうまくいきません。
これは歯科技工だけのはなしではなく、自動車や多くの製品は元になる金型を大量生産できるレベルに微調整するのは匠(たくみ)の技が必要になると言われています。微妙な差異を感じ取るのは測定ではなく感覚の世界で、それは最高度の技術を持っている自動車産業でも職人技に頼らなくてはなりません。

職人技を可能にするのは脳の働き

それでは治療ではなく診断の分野はどうでしょうか。現代のAIはディープラーニングといって、非常に多数の事例、例えば猫の写真を何千、何万と読み込ませ、その中でパータンを自動的にコンピューターが見つけ出します。つまり「猫」というものの形状の特徴をコンピューター自ら学び取ってくれるのです。

AIは様々な猫を見ることで、猫の特徴を自ら学ぶことができる

歯医者もレントゲン写真や、痛みのタイプ、歯茎や歯の状態など様々な情報から診断を下します。このような作業をAIがサポートしてくれることは大いに期待できます。人間の記憶力、想像力には限界がありますから、知らなかった、あるいは想像もできなかった可能性をコンピューターで指摘してくれるかもしれません。

歯医者は多様な情報から診断をくだす

しかし、診断を下した後、治療計画を作る段階になると再び難しい問題が立ちふさがります。AIを操るAI技術者が必要なように、治療計画を作成するのはパターンから一つの結論を出すようなわけにはいきません。治療の順序は優先順位は年齢、経済的考慮、他の治療との関係など考えなければならないことが非常に多くあります。
医学は科学の中で経験が占める割合が非常に大きい分野です。単純に論理を積み上げていくだけでは、患者様それぞれに最適な治療計画を立てることはできません。「できる」とは言っても症状から診断を下すことも、猫の写真を何万枚も見ることで猫の形状のパターンを学習するほど簡単ではありません。
歯科治療は、診察し、診断を行い、治療計画を作り、治療を進めていきます。治療を進める中で予期しないことがあり、治療計画を変更する必要があります。しかも、その作業の多くは実際に口腔内を十分に観察できる環境が必要です。
さきほど述べたように治療をロボットが行うことはもちろん、遠隔操作で行うことも簡単ではありません。これは歯科技工でコンピューター処理が匠の技に近づけないのと共通の人間の持つ総合的な判断力が、作業に必要になってくるからです。
AI時代になり、多くの仕事がコンピューターで人間から置き換えられるのは確実です。また、歯科の仕事の色々な部分でコンピューターやAIがますます活躍していくの間違いありません。しかし、歯科治療は全体としてみればAIが簡単に踏み込めるものではありません。医療は非常に深い部分で人間の能力に大きくかかわっているのです。

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