2015年2月2日
「歯は抜くな!削るな!かぶせるな!」と帯に書いた歯科医師の著書が発刊されています。題名のご紹介までしないのは、内容がいささか極端に思える部分が多く、全面的に推薦するというわけにはいかないと思うからです。とは言っても、歯をできるだけ削らず(かぶせるな!は時と場合によりますが)、抜歯を避けるように努力するというのは、歯科の基本であることは間違いありません。
しかし、歯科治療が虫歯の箇所をできるだけ残さないようにしっかり削り、再び悪化した同じ歯をまた削り、最後は抜歯にいたるということが、むしろ一般的だったことは事実です。虫歯を治し詰め物をしても、わずかな隙間から唾液などが浸潤し、そのために虫歯が再発して、また削るということを繰り返せば、いずれ歯を抜くことになる可能性は高くなります。歯は治せば治すほど悪くなるという意見は極論とばかりは言えません。
歯を最小限にしか削らない、英語でミニマム・インターベンション(MI)という考え方が出てきました。MIの考え方は、無闇に人工物で置き換えるのではなく、歯の自然な状態を最大限生かしながら、人工物の利用を進めようとするものです。MIを実現するのは、削る量がわずかでも、削った部分をきっちり封入するレジンのような材料だけでなく、虫歯にならないための予防や予後の保守のような管理も含めた全体的に治療体系です。
そして、抜かないための治療のキーになるのは根管治療です。マナミ歯科クリニックはマイクロスコープを用いた精密な根管治療によって、昔は抜くしかないと考えられた歯の根の治療を行っています。根完治療を成功させるには、歯科医の技術だけでなく、マイクロスコープやCTのような高度な治療器具が非常に有効です。マイクロスコープもCTも歯科医の「見る力」を格段に強化します。最近の歯科技術の進歩の大きな部分は従来は歯科医の手先の感覚や経験に頼っていた患部の状況を実際に見ることができるようになったことによります。
「抜かない、削らない」と並んであげられた「かぶせない」はどうでしょう。虫歯になれば全く削らずに治療することは難しい場合が多いですし、削った部分をそのままにしては見た目も悪く、食物残差が詰まってまた虫歯になりやすくなってしまいます。前に書いたように材料技術の急速な進歩によってレジンのような合成材料が高い封入性、耐久力、見た目(自然歯に近い色)を実現するようになっています。
歯に詰めたり、かぶせたりする機能としては依然として金は非常に優れた材料です。しかし、金は材料としてますます価格が高くなっていますし、金色に輝くため見た目という点では嫌う患者様が最近は増えています。自然の歯に近い見た目、高い耐久性と生体との親和性を兼ね備えた材料としてセラミックがあります。ただ、セラミックは加工の容易さと言う点では金にはおよびませんし、保険適用がないため高価な治療方法です。
ところが、昨年(2014年)の保険の改定でCADCAM技術つまりコンピュータを使ったセラミックの加工に対し保険が大幅に適用されるようになりました。このため当院に導入されているセレックシステムがこれに活用できます。セラミックの世界がぐっと近くなりました。
また、当院では自費治療を中心に院内技工士がセラミックの技工物を作ります。ベテランの院内技工士はドクター、患者様の声を直に受け取りながら、色や適合性にきめ細かい配慮を行います。適合性の優れたセラミックのかぶせ物は歯が再び虫歯になるのを防ぎます。
「抜くな、削るな、かぶせるな」は理想ですが、一つの技術で何もかもできるわけではなく、歯科医院のまさに総合力が問われるところです。さらに、やむ得ず抜いてしまった歯の咀嚼力をできるだけ回復するにはどうするかということも当然ですが非常に大切です。インプラント、義歯、ブリッジなどの治療技術の中で患者様の肉体的条件、ご希望にもっとも適合したものを高い治療技術でご提供できることは、抜かない努力と同じように重要です。
歯はとても複雑な器官です。外部と接しているだけでなく、咀嚼力を得るために力がどのようにかかるかに十分配慮ができなければ、長い目で見て良い結果を生むことができません。患者様はあまり極端な意見(書名をご紹介しなかった本にはその傾向が見られるのですが)に惑わされず、じっくり納得ができるようにドクター、スタッフを話し合っていただければと思います。
マナミ歯科クリニックのMIという歯科治療の新しい選択肢
当院では、患者さんが抱えていらっしゃるお口のお悩みや疑問・不安などにお応えする機会を設けております。どんなことでも構いませんので、私たちにお話ししていただけたらと思います。
ご興味がある方は下記からお問い合わせください。