2014年2月3日
東工大教授の本川達雄先生が書かれた「ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学」という本があります。その中で本川先生は同じ時間でも象の時間とネズミの時間は違う速度で流れていると述べられています。それは、それぞれの動物が感じる時間は心臓の鼓動の速度に関係があって、同じ時間でも心臓の鼓動が早ければ時間がその分速く過ぎてからだというのです。
心臓鼓動は、象が3秒に1回なのに、ハツカネズミでは1回が0.1秒です。つまり、鼓動で時間を刻むと、ハツカネズミは象より30倍時間が速く流れていることになります。鼓動の速さは体が大きくなるほどゆっくりになり、人の場合は1秒に1回、馬では2秒に1回になります。
本川先生によれば、動物が一生の間に打つ鼓動の数は鼓動の速さにかかわらずほぼ一定で、そこから計算した寿命は象が70年なのに対し、ハツカネズミは2-3年になります。同じように計算すると人の場合は26年です。日本人の平均寿命は82才ですから、日本人は心臓の鼓動で計った時間よりずっと長く生きていることになります。
ところが実際に動物園で象を飼うとなかなか70年を生きることはできません。それは50才を超えると歯が悪くなってだんだん食が細くなってしまうからです。動物園によっては野菜ジュースを作って象が歯が悪くなっても栄養が取れるように工夫する所もあるそうです。
また、中国では象に入れ歯を作るという試みもされているとのことです。これがうまくいけば象が心臓の鼓動で刻んだ70年という本来の天寿を全うできるようになるかもしれません。
人間の場合も歯が悪くなって十分に栄養が摂れなくなると長生きは難しくなります。しかし、人間は虫歯で削っても詰め物やかぶせ物で補うことができます。歯そのものを失っても入れ歯やインプラントという歯の代わりになるものを使うことができます。いつも予防に気を付けていれば歯を失う一番大きな原因となる歯周病を防止することもできます。
人間は心臓の鼓動で計った寿命より歯の健康を維持することでずっと長く生きることができるのです。ところで入れ歯を入れた中国の象がその後どうなったかは色々調べたのですが、判りませんでした。入れ歯を作ったのは人間の歯科医だったそうですから、慣れない仕事でうまくいかなかったもしれません。自分専用の歯科医を持つ人間は象より幸せだと言えるかもしれません。
動物の寿命は体の大きさと深い関係があり、一般には体の大きな動物ほど長生きです。これには一つの仮説があって、哺乳類は一生の間に15億回心臓が鼓動する分だけ生きられるというのです(詳しくは
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