2017年4月7日
インプラントはチタンネジの上に、人工歯を装着して抜けた歯の代わりにする治療法です。歯が抜けると、抜けた歯を補うために、ブリッジと言って、文字通り橋のように両側の歯の間に人工歯を渡す方法、と入れ歯が治療方があります。しかし、ブリッジは両側の健康な歯も削るだけでなく、かなりの負担が両側の歯にかかり、歯垢もたまりやすく耐久性に弱点があります。入れ歯はどんなに優れた物でも違和感が残りますし、咀嚼力も自然歯に比べればかなり落ちます。
これに対し、インプラントは自然歯とほとんど同等の咀嚼力を違和感もなく回復できる治療法なのですが、一方でインプラントに対して疑問や不安の声が上がっているのも、事実です。インプラントは本当に優れた治療法なのか。どんな時に有効で、どんな時には適用できないか。歯医者ではちょっと聞きにくい疑問にお答えします。
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インプラントは危険?
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インプラントをためらう原因に安全性への懸念があるのは間違いありません。中には、インプラントでの死亡事故の例をお聞きになった方もいるかもしれません。死亡にいたらないまでも、インプラントが失敗して除去しなくてはいけなくなって大きな手術をすることになったなど、最近はインプラントのネガティブキャンペーンが行われていると言っても良いほどです。
端的に言ってインプラントは確立された治療法があり、それに沿っている行われている限り本来危険はありません。しかし、十分な経験と知識のない歯科医が行ったインプラント施術が深刻な事態を招いてしまう可能性は潜在的にはあります。
インプラントは最初に説明したようにチタンネジを歯の根の代わりに埋め込む(埋入(まいにゅう)と呼びます)のですが、埋入する場所は顎の骨です。顎の骨と表面との間にある歯肉に動脈や神経が沢山詰まっています。これはインプラントに限らず、歯の治療全般に言えることですが、歯の治療は首から上の人体で最も重要な部分に外科的な処置を加えるものです。歯科治療は決して安易に考えてはいけないものなのです。
特にインプラントは顎の骨に到達するまでに歯肉(軟組織と呼びます)を通過するので、血管や神経を含む軟組織の状態を正確に知っておく必要があります。このためインプラント治療ではCT撮影がほとんど必須になっています。CTで動脈のような危険な場所を回避しながら、インプラント施術は行う必要があるのです。CT撮影を含め検査を十分に行わずにインプラントを勧めたり、行ったりする歯医者は避けた方が良いでしょう。
インプラントがブームになったのは歯科医過剰が言われるようになった、この20年くらいのことです。インプラントの施術は歯科医師である限り、数日の講習を受ければ(法的には受けなくても)実施できます。しかし、実際に安全にインプラント治療が行えるようになるためには、ベテランの歯科医師とともに何年にも渡り多数の症例を積み重ねていかなければならないのに、それを省いて未経験な歯科医がトラブルを引き起こした例が多いのです。歯科でなくても新しい術式を経験のある医師がいないまま手術をして医療事故につながることがあるのと同様の事がインプラントでも起きる可能性はあります。
しかし、一般の外科手術と比べインプラントが危険ということはなく、危険性は通常の抜歯などと比較した方が良いようなものです。ただし、それはあくまでも知識経験がある歯医者がきちんと検査、診断をした上で施術を行うことが条件になります。
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インプラントは半永久的?
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インプラントはどれくらい持つかというご質問がよくあります。「何年かでダメになるという耐用年数はありません」が答えです。
近代的なインプラント治療を確立したスウェーデンのブローネンマルクが歯科用CTなどなかった1965年に最初の人体へのインプラントの埋入施術を行いましたが、この患者は41年後の2006年に亡くなるまでインプラントをそのまま使い続けました。顎の骨に埋められたチタンは骨の組織と結合し一体化するため事実上肉体の一部となって人工歯を支え続けるのです。
ただ、インプラントは虫歯にはなりませんが、歯周病(インプラントの場合はインプラント歯周炎と呼びます)にはなります。歯周病は日本人が歯を失う最大の原因ですが、歯周病によって歯茎が冒され、顎の骨が失われると埋め込んだチタンネジが上部構造を支えきれなくなります。この場合はインプラントの装着物を除去する必要があります。
また、チタンネジの周辺が炎症を起こしてチタンネジがうまく骨と一体化しないインプラントロスという現象もあります。インプラントロスは滅菌処置の厳重な手術環境で経験のある歯科医師がインプラント施術を行った場合の発生率は数%以下ですが、皆無ではありません。また、滅菌状態、歯科医の経験・技術により確率は違ってきます。
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インプラントの価格がなぜ歯科医院によってこんなに違うの?
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マナミ歯科クリニックではインプラントの価格表をホームページで公開しています。この価格表をご覧になるとインプラントの価格が沢山の要素から構成されているのがわかります。
インプラントの価格の安さをうたっている歯科医院もありますが、どの値段を指しているのかのチェックは必要です。検査にCT撮影は含まれていないケースもありますし、よくあるケースとしては装着する人工歯の部分が含まれていない値段を提示しているところもあります。本来必要な部分の価格を省いて「安い」という印象を与えるのは、あまり感心したことではないと思います。
次に、あまり知られていないことですが、インプラントはチタンネジ、人工歯だけでなく、ネジを埋め込む器具、人工歯のネジ山など互換性が必要な多数の器機、部材からなるシステムだということです。世界には内外100社以上のインプラントメーカーがひしめいていますが、これらのシステムの多くは互いに互換性がありません。実績、品質にもばらつきがあります。
マナミ歯科クリニックでは「ノーベルバイオケア」という世界的なトップメーカーのものを採用しています。これは品質や実績で安心できるということの他にも、海外でインプラントの修復などの必要が起きた際も容易に対応できるということがあります。
ノーベルバイオケアのような世界的メーカーはインプラントの部材、パーツにとどまらず、インプラントの最適な埋入角度をCTの情報や対合歯(インプラントを埋入する噛み合わせをする反対の歯)への負荷が課題にならないようなシミュレーションソフトを提供しています。さらに、計算された埋入角度の通り埋入を行うための装置も提供しています。(料金表で「ガイドサージェリー」と記載されているものです)
このように単なる部材提供を行うメーカーと、ソフトウェアも含めた高度な治療体型を提供するメーカーを使用するかは価格に大きく関係します。歯科医院によっては複数のインプラントシステムを採用して価格により使い分けているようなところもあるようですが、複数のシステムが混在することで間違いが生じる可能性もありますし、インプラントの安全性をできるだけ高めるという点では多少問題のある方法ではないかと思います。
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インプラントに健康保険は使えないの?
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インプラントは原則自費治療となります。インプラントが高価になるのは、健康保険が適用されないこともあります。これはインプラントの治療目的の抜けた歯による咀嚼力の回復に同様の目的で健康保険が適用されるブリッジと入れ歯があるからです。ただし、ブリッジや入れ歯も健康保険が適用されるものと自費になるものがあります。この差は使用されている素材の相違です。
インプラントも事故で顎の骨を大きく失ったような場合の開腹手術の一部として使用される場合は健康保険が適用されるものがあります。ただし、これは大きな事故に対応する手術を行う大病院(主として大学の附属病院)でのみ認められるものです。一般的にはインプラントは自費治療となります。
マナミ歯科クリニックのインプラント
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