何が違う?乳歯と永久歯
2025年10月14日

お子さまの乳歯が永久歯へ生え変わる時期には、保護者の方がいくつかの点に注意することで異常の早期発見につながります。ここでは、乳歯と永久歯の見分け方に加え、それぞれの役割やなぜ生え変わるのか、そして乳歯のケアが重要である理由についてわかりやすく説明します。
乳歯と永久歯の見分け方(チェックポイント)
- サイズ(大きさ)
乳歯に比べて永久歯のほうが全般的に大きく、厚みや長さにも差があります。切歯・犬歯・臼歯いずれも永久歯のほうが大きいのが基本です。
- 色の違い
意外に思われるかもしれませんが、一般には 永久歯のほうがやや黄色味がかって見えることが多く、乳歯は青白く見える傾向があります。ただし、着色や内部の変色があると見分けにくくなることがあります。
- 本数と出現順
標準的には乳歯は20本(上下それぞれ10本)、永久歯は親知らずを除くと28本です。とくに「6番目」の歯(6歳臼歯)は乳歯と入れ替わる歯ではなく、最初から永久歯として生えてくるため、6番目に生えてきた歯はまず永久歯と判断できます。6歳前後に出てくるので、生え変わり期の目安になります。
- 萌出の時期
乳歯は生後6〜12か月頃から生え始め、2〜3歳頃には一通りそろいます。6歳前後から永久歯が順次萌出し、12〜13歳頃に大部分の永久歯がそろいます(親知らずはさらに後年に出る場合があります)。個人差がありますので、気になる場合はご相談ください。
乳歯と永久歯にはそれぞれ「役割」があります
乳歯の役割
- 咀嚼(食べる)を助ける:固形食の咀嚼により栄養摂取を助けます。
- 発音・言語の発達に寄与:舌や唇との相互作用で言葉の発音が育ちます。
- 永久歯の「道しるべ」:乳歯は永久歯が正しい位置に生えるためのスペースを保持する重要な役割があります。乳歯が早期に失われると、永久歯が傾いたり生える位置がずれてしまうことがあります。
- 顔の成長や咬合の発達に関与:咬合バランスが骨格発育に影響します。
永久歯の役割
- 成人期の咀嚼機能を担う:より大きく丈夫で、長期間機能することを目的としています。
- 審美性・発音の最終的な安定:永久歯列が整うことで顔貌や発音が安定します。
なぜ「乳歯が永久歯に生え変わる」のか
- 顎の成長に合わせたサイズ調整:子どもの顎は成長します。小さな乳歯を一旦使い、顎が大きくなるにつれて大きな永久歯が出てくることで、咬合と顎のバランスをとります。
- 一時的な機能とスペース維持:乳歯があることで早期の栄養摂取や発音が可能になり、同時に永久歯のためのスペース管理を行います。
- 自然な更新(置換):乳歯の根は永久歯の萌出により吸収され、自然に抜けて永久歯が出てきます。
「乳歯だから手を抜いてよい」は誤りです — 乳歯のケアが将来に直結します
乳歯は一時的な歯だからといって、虫歯ケアを怠るのは大変危険です。乳歯が虫歯で早期に失われたり、重度に損なわれると…
- 永久歯が 傾いたり、正しい位置に生えなくなる(不正咬合の原因)
- 咀嚼や発音の発達に 悪影響 を与える
- 将来の矯正治療が 必要になる可能性が高まる
そのため、乳歯期からの毎日のブラッシング、フッ素塗布、定期的な歯科検診が非常に重要です。
保護者のための実践的ポイント(毎日のケアと受診の目安)
- 毎日の歯磨きを習慣化
仕上げ磨きは小学校低学年までは保護者が行いましょう。歯磨きの回数は食後と就寝前が基本です。
- フッ素の活用
フッ素入り歯みがき粉や歯科でのフッ素塗布は虫歯予防に効果的です。年齢に応じた使用量で行いましょう。
- 甘い飲食物の管理
だらだらとした間食や糖分の多い飲料は虫歯リスクを高めます。間食の時間を決めるなど工夫を。
- 早期の歯科受診
乳歯が抜ける時期に遅れや早すぎる脱落、永久歯の萌出異常(斜めに生える・生えてこない)などがあれば早めに受診を。定期検診で早期発見が可能です。
- 乳歯の早期喪失がある場合
早く乳歯を失った場合は、永久歯の萌出に影響しないよう**スペースメンテーナー(保持装置)**を検討することがあります。小児歯科医とご相談ください。
こんなときは受診を(早めの相談が望ましいケース)
- 乳歯が極端に早くまたは遅く抜ける
- 永久歯がいつまでも生えてこない、あるいは不自然な位置に見える
- 乳歯に大きな虫歯や痛み、腫れがある
- 乳歯が抜けた後、隣の歯が倒れて空間が狭くなっているように見える
乳歯と永久歯にはそれぞれ重要な役割があり、また生え変わりには個人差があります。小さいうちから定期的に歯科を受診しておくことで、異常の早期発見・適切な予防が可能になります。気になることがあれば小児歯科医にご相談ください。(渡辺先生記)
