親知らずを抜いた方が良い時:智歯周囲炎
2019年5月19日
親知らずはまっすぐ生えていないことが多い
智歯とは親知らずのことです。英語では親知らずは wisdom tooth と言うことの直訳ですが、日本ではどちらかというとやや専門的な言葉でしょう。親知らずが生えてくるのは、18−20歳頃からなので「親が気がつかない」あるいは平均寿命の短い時代なら「親が亡くなった頃」生えてくる歯です。
成人の歯(永久歯)は28本とされています。親知らずは上下左右にあるのでこの4本を加えると32本なのですが、親知らずは永久歯の本数にははいりません。それは、後から生えてくる親知らずは斜めに生えていたり、歯茎の中に埋まっていることが多く、噛む機能を果たさないことが多いからです。
親知らずが真っ直ぐに生えていないのは顎に収まりきらないからです。人類は火を使うことで食物を柔らかくして食べるようになりました。このため強い力で噛む必要がなくなって顎が小さくなり、元々はちゃんと噛むことに使えた親知らずが居場所を無くしてしまったからだと考えられます。
親知らずは奥に上下左右合4本ある
ちなみに、柔らかいものを食べることで顎が小さくなる傾向は現代も続いています。ハンバーグのような柔らかい食事が増えたことで、日本人の顔が小さくなってきたことを明らかにした研究結果も発表されています。
親知らずは結局抜歯することが多いのですが、抜歯の理由になることが多いのが智歯周囲炎です。親知らずは奥にあるために歯磨きが難しい上に、斜めに生えていることで隣の歯(第2大臼歯、親知らずは第3大臼歯とも言います)との間に食物が挟まりやすく、不潔で細菌の温床となりがちです。そのため歯肉が細菌により炎症を起こしやすくなります。これが智歯周囲炎です。
智歯周囲炎は当初は痛みはなく静かに進行しますが、風邪や疲労などで抵抗力が落ちたことがきっかけになって痛みが出始めます、。痛みは何となくというレベルから、はっきりと感じる、頰が腫れる、さらに口が開けにくくなるといった段階に進んでいきます。他の歯科治療と同じで、なるべく早く受診することが望ましいのは言うまでもありません。
智歯周囲炎は、治療として患部の洗浄、抗菌薬、鎮痛剤の服用を行うことで、腫れや痛みも普通は治ります。しかし、腫れも痛みは繰り返されますし、次第に強くなってきます。特に急性の症状の場合、発熱や倦怠感などの全体症状が現れることも少なくありません。
親知らずの抜歯は、難しければ口腔外科医の分野
ここまでくると、できればそうなる前に智歯周囲炎を起こす親知らずは抜歯が勧められます。親知らずには真っ直ぐに生え、噛む力もきちんとあるものもありますが、智歯周囲炎を起こす親知らずは通常どちらでもなく、早く抜歯をすることでより悪化することを予防することができます。
親知らずの抜歯は簡単なものもありますが、奥にあり抜きにくいですし、骨の中に食い込む形で埋まっていることもあります。神経や動脈に近いこともあり、多くは口腔外科を専門とする歯科医の担当になります。それでも、抜歯の先延ばしは、加齢とともに骨が硬くなることもあって、抜歯はより難しくなってきます。智歯周囲炎を起こす親知らずへの対処の基本は抜歯です。
金属の詰め物は合着で固定する
親知らずの抜歯はは早めがお勧め