インプラントありきではいけない理由
2019年10月12日
インプラントだけが唯一の治療法とは限らない
インプラントは歯を失った時、チタンネジを歯の土台ある骨に歯の根の代わりに埋め込み人工歯を装着する方法です。しっかりとしたチタンネジの人工歯根で支えられたインプラントの歯の咀嚼力は天然歯とほとんど遜色ありません。また、メンテナンスをきちんとすることで、生涯使い続けることができるほどの耐久性があります。
歯を失った時、インプラント以外では義歯(入れ歯)とブリッジという方法があります。ブリッジは失った歯の両側の歯の間に文字通りブリッジ(橋)のように人工歯を取り付ける治療法ですが、健康な歯を削らなければなければいけません。また、入れ歯に抵抗感を持つ人は少なくありません。インプラントは歯を失った時に咀嚼力、耐久性を基準にすれば一般的には第一選択肢となる治療法です。
ただ、インプラントは健康保険が適用されないため、費用は他の治療法と比べて高額になります。それだけでなく、チタンネジを埋め込んでからインプラントを装着するまでには何か月かかかります。もっとも、最近は治療技術の進歩で抜歯後すぐにチタンネジを埋め込む即時埋入やチタンネジにすぐに人工歯を装着する即時荷重という治療法も行われるようになってきました。
しかし、インプラントに対する抵抗を持つ人は少なくありません。チタンという「異物」を骨に埋め込むことを懸念したり、インプラントが高額な治療であることから「歯医者が金儲けのためにやっている」と決めつけることさえあります。
インプラントに抵抗感を持つ人もいる
歯科治療に健康保険がほとんど適用されないアメリカではインプラントが必ずしも他の治療と比べて高額ではないので、インプラントは欠損歯の治療としては一番一般的な方法です。他の治療を行うのは、例えば高血圧や糖尿病でインプラント施術にリスクが伴ったり、チタンネジを支える土台の骨が十分にないといった費用以外の理由が多くなります。
とは言っても、「インプラントセンター」といった名称を付ける歯科医院の一部には他の選択肢に対する十分な検討がないまま、インプラント勧めるようなことがあるのも事実です。しかし、いくらインプラントがすぐれた治療法でも常にベストとは限りません。
一つの例として抜歯をせず歯を残すこと考えられます。虫歯の治療で抜髄(神経を取ること)をし、その後治療歌唱が炎症を起こす根尖性歯周炎というものがありますが、根の治療は難しく結果的に抜歯になることが少なくありません。しかし、マイクロスコープなどの機材やMTAセメントといった優れた歯科材料の出現で、抜歯を避けることが以前よりずっと高い確率でできるようになりました。
マイクロスコープを使用した歯科治療
入れ歯も支台歯(入れ歯を取り付ける土台の歯)にマグネットで固定させるものは高い咀嚼力を提供します。支台歯の代わりにインプラント使い他の歯を入れ歯とすればインプラントの本数は少なく済みますし、費用も抑えられます。
ブリッジが両側の歯を削らなければならないのは事実ですが、依然と比べセラミック素材の強度が増したため、オールセラミックでブリッジを作ることで美しい歯並びをインプラントよりはずっと速く実現することも可能です。
一方でインプラントの適応範囲も広がってきています。土台の骨が少なくてインプラントが不可能と思われたケースも骨造成の進歩で可能になってきましたし、コンピューターシミュレーションを使ってより精密にインプラント手術を行うことで、先述の即時埋入、側果汁のような治療期間の短縮も可能になってきました。
歯科治療は日進月歩です、まずインプラントありきではありませんし、インプラントがダメと簡単に決めてしまうのも早計です。歯科医院もインプラントだけでなく、義歯、根管治療、セラミックなど様々な治療法を十分に比較検討して、インプラントの採用を治療計画に組み入れるかどうかを検討する時代になってきています。