健康な長寿のための口腔ケアとは
2019年3月19日
口腔内の健康は健康な長寿につながる
最近、歯を残すことが元気な老後を過ごすために大切だという認識が高まってきました。80歳で20本の歯を残そうという8020運動をご存知の方は多いと思います。成人の歯は親知らずを除くと全部で28本なので、80歳までに8本以上の歯を失ってはこの目標に達しません。
8020運動が始まったのは1981年ですが、その頃は80歳以上で20本の歯を残している人の割合は7%程度でした。しかし2017年には51%、つまり半数以上の人が8020を達成するまでになりました。今は単に歯を残すだけではなく、より健康な口腔内ケアを目指すことが重視されるようになりました。
歯が残っている、つまりしっかりした咀嚼力を維持できると、噛めないという理由で食べられないものがなくなります。肉類は不足しがちな高齢者にとって不足しがちなタンパク質の効率的な摂取源ですが、歯が悪いと焼肉やステーキを楽しむことも難しくなります。
肉は効率的なタンパク源
また、しっかりと咀嚼を繰り返すことは消化をよくするだけでなく、間隔機能を活性化させ脳に有効な刺激を与えることが認知症の防止につながることがわかってきました。それと食べられるものが限定されることで、外食がおっくうになりコミュニケーションが乏しくなることが認知症への引き金になりかねません。
歯を失う原因は主として歯周病と虫歯です。どちらも日頃からの歯磨き、定期的な歯石除去や検診で減らすことができます。これは歯を失わないことは口腔内の健康状態がすぐれていることを意味します。
中でも虫歯以上に歯を失う原因となる歯周病は、歯を失うことがなくても、糖尿病など様々な生活習慣病を引き起こします。また、糖尿病も歯周病を悪化させるため、歯周病と糖尿病は合併症とさえ言われることもあります。
口腔内の環境がよくないというのは食物残滓やプラーク(歯垢)がいつもある状態です。これは口腔内が細菌の繁殖に都合の良い環境にあるということです。このため口腔内ケアを怠ると高齢者に多い誤嚥性肺炎のリスクが高まります。
8020運動と言ってもすでに歯を失ってしまった人はどうすればよいでしょうか。自分の歯、天然歯の代わりに入れ歯やインプラントで咀嚼がきっちりできると認知症のリスクは天然歯を残しているのと同様に減らすことができます。
ただ、インプラントは虫歯にはなりませんがインプラント性周囲炎という歯周病の一種にはなります。メンテナンスを怠らず口腔内ケアを行う必要性は天然歯よりさらに高いと言えます。なぜならインプラント性周囲炎からインプラントのために埋入されたチタンネジを除去するのはかなりの施術になるからで、一般の歯科医院ではなかなか対応が出来ません。
入れ歯も清潔に保つことは大切です。ある介護施設で入れ歯の手入れが不十分で、事実上入れ歯を使えず、急速に認知が進んだと思われるケースがありました。入れ歯の掃除や入れ歯を使い続けることは高齢者ケアでは重要です。
口は体の内部の入り口です。食事という行為が喜びになるのは咀嚼がきちんとできればこそです。また、口腔内ケアを十分に行うことで生活習慣病が悪化したり、誤嚥性肺炎や認知症のリスクを小さくすることができます。健康な長寿のために口腔ケアの果たす役割はとても大きいのです。
歯を残すことは高齢者の健康に大切
参照