喫煙は歯周病を見えにくくする
2020年4月30日
喫煙は歯周病に気付きにくくする
歯周病は自覚症状に乏しい病気です。気付いたら重症化していた、という場合は少なくありません。それだけに、普段からしっかりと歯茎の健康状態を観察することが大切なのですが、喫煙習慣がある人は注意が必要です。なぜなら、タバコには歯周病の症状を隠す「マスキング効果」があるからです。
歯周病にかかると、歯茎に細菌が感染し、炎症反応を引き起こします。「歯茎が赤く腫れる」「ブラッシング後に出血がある」といった症状が該当します。これは歯周病を自覚する上でとても大切なサインなのですが、タバコの煙に含まれる一酸化炭素(CO)がその症状を隠してしまうことがあるのです。
炎症が生じている組織の周囲では、血管が拡張して、組織液などが充満しています。歯茎が赤く腫れたり、出血しやすくなったりしているのはそのためです。一方、一酸化炭素には血管を収縮する作用があることから、炎症による歯茎の腫れなどを抑えてしまいます。
歯周病は歯肉が赤く炎症を起こす
一見すると、それは良いことのように思えますが、そもそも炎症反応というのは、細菌やウイルスを排除するために起こるものです。今現在、細菌感染が起こっているにも関わらず、その作用を抑えられてしまったらどうなるでしょうか?
それは免疫が正常に機能しないことを意味するので、歯周病自体はさらに進行していきます。ですから、外見上は健康そうに見える歯茎も、レントゲンを撮影してみたら、歯槽骨がボロボロになっていたというケースも珍しくはないのです。
歯周病は、ただでさえ自覚しにくいのに、喫煙によってさらに見分けがつきにくくなってしまったら重症化も避けられません。進行した歯周病は、脳梗塞や心筋梗塞、糖尿病などのリスクも上昇させます。
喫煙はそれ自身、歯周病のリスクを高めます。それはタバコの煙に含まれる一酸化炭素が組織への酸素供給を妨げる上に、タバコに含まれるニコチンが血管を収縮させ、歯肉を酸欠状態にさせます。また、タバコのヤニはねばねばしていて歯肉の上に歯周病菌の格好の培養地を作ります。
元々、歯周病リスクを高める喫煙習慣がかえって、歯周病の歯茎を赤く腫れ上がらせるという文字通りの赤信号を見えにくくさせてしまう。タバコ歯周病に二重、三重に悪影響があると申し上げなければなりません。