2020年7月23日
歯の神経や血管で構成されている「歯髄(しずい)」は、可能であれば保存が望ましいと考えられます。なぜなら、歯髄は外からの刺激を受容や第二象牙質の形成、免疫機能の発現などを担っているからです。そのため、比較的進行したむし歯であっても、歯髄を保存することを優先する場合があります。歯髄保存療法あるいは生活歯髄療法と呼ばれるものです。
歯髄保存療法は、「歯髄消炎鎮痛療法」「間接覆髄」「直接覆髄」「暫間的間接覆髄(IPC)」の4つに分けられます。まず、歯髄消炎鎮痛療法についてですが、これは歯髄に炎症が生じているものの、細菌感染を起こしていないケースに適応されます。消炎鎮痛剤を用いて、亢進した歯髄の知覚機能を正常に戻します。
虫歯が進行して歯を削ると露髄と言って歯髄が露出しますが、直接覆髄は歯髄が直接露出した状態、間接覆髄とは象牙質がわずかに歯髄を覆っている状態です。いずれにせよ、歯髄が感染していないことが歯髄保存療法の条件になります。
歯髄の感染が起こっていないケースでは、窩底の健全な象牙質に薬剤を貼付し、歯髄の消炎鎮痛や修復象牙質の形成を促します。直接覆髄は、外傷やむし歯治療などで偶発的に露髄してしまったケースに適応されます。つまり、歯髄が存在している歯髄腔がむき出しとなった状態です。ただし、歯髄に感染が起こってしまったら、抜髄、歯髄を除去しなければなりません。あくまで無菌的な状態であることが条件です。
最後に、暫間的間接覆髄(IPC)についてですが、これは少し特殊な歯髄保存療法といえます。というのも、適応されるのが比較的若い人に限られるからです。虫歯治療を進めていく中で、それ以上切削を続けると露髄してしまう場合に適応されます。感染した象牙質は少し残ってしまいますが、そのまま薬剤で覆うことで、修復象牙質が形成されるのを待ちます。その期間は3~6ヶ月程度です。この処置が成功すれば、歯髄を犠牲にせずとも虫歯を完治させることが可能となります。
進行した虫歯では、歯の神経を残すか否かという判断が必要ですが、歯髄が感染で侵されていなければ、歯髄を保存する可能性があります。
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