2023年12月22日
歯周病はさまざまな全身疾患のリスク因子となることは良く知られています。糖尿病は歯周病の合併症とまで言われていますが、「アルツハイマー型認知症」との関連についても指摘されています。それでは、記憶力が低下する脳の病気と口腔疾患である歯周病がなぜつながるのでしょうか。
それはアルツハイマー型認知症の根本的な原因となる「アミロイドβタンパク質」が鍵を握っています。アミロイドβは、脳内のゴミともいえるタンパク質で、健康な人であれば自然に分解・除去されます。それが脳内に蓄積すると脳細胞を死滅させ、脳全体を委縮させることで記憶障害などをもたらします。
実は、このアミロイドβは、歯周病にかかっている人の歯茎からも検出されることがあります。代表的な歯周病菌であるP.g菌は、アミロイドβの産生を促す「カテプシンB」という酵素を著しく増大させるからです。その現象は、歯周組織だけにとどまりません。
歯茎の血管に侵入したP.g菌は、全身を巡りながらアミロイドβを産生し、その一部は脳血管へと移行します。そこでもカテプシンBを増大させるだけでなく、炎症反応も増強するのです。ただし、脳実質は血液脳関門というバリアーで守られているため、通常は脳の活動に必要な栄養素などを選択的に取り込みます。脳神経を障害するような物質は、入りにくくなっているのです。
けれども、P.g菌によって増大したカテプシンBが「RAGE」という受容体を増加させることで、血液脳関門のバリアー機能が弱まり、アミロイドβが侵入しやすくなることがわかっています。脳内では、カテプシンBによって増加した受容体にアミロイドβが結合することで「老人斑」というアルツハイマー型認知症特有の病巣が拡大していきます。
アルツハイマー型認知症の人の脳内からは、P.g菌に由来したLPSという内毒素が検出されることがあります。これは歯周病菌が脳という人体において最も重要な器官にまで、直接的な影響をもたらしていることの証拠でもあるのです。
歯周病とアルツハイマー型認知症との関連は、その細部まで科学的に解明されているものなので、疑いようがありません。その点も踏まえた上で、私たちは歯周病という口腔疾患と向き合わなければならないのです。
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