症例写真は個人情報?
2018年4月30日
治療法の説明は治療に不可欠
最近「症例写真は個人情報だから見せられない」という歯科医院があるようです。もちろん「私の症例写真は一切、私の治療目的以外に使用しないでください」と言われれば、その写真は学術発表を含め症例として使用されることはありません。
しかし、それとは別に症例写真は個人情報なのでしょうか。個人情報とは「生存する個人に関する情報であって、当該情報. に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができる」ものです。
難しく感じられますが、個人が特定できることでその個人のプライバシーが侵害される可能性があるものが個人情報ということになります。しかし、歯科で使用するほとんどの症例写真は口の中や口元だけを写したものです。個人が特定されるということは事実上考えられません。
口元や口腔内の写真で個人の特定は難しい
症例写真がまったく示されないと一体どんな治療になるか専門家でなければ見当もつかないこともあります。「コーヌスデンチャー」「エクスルージョン」など聞いたこともない患者様も多いでしょうし、「ラミネートベニア」のような比較的一般的なものも「見せられなければわからない」と感じることもあるでしょう。
症例写真で説明しないとどんな治療かわかりにくい(写真はコーヌスデンチャーの治療過程)
自院で撮影した症例写真の代わりに、別の資料、ネット情報などで説明することも可能でしょうし、実際そうすることあるのですが、治療受ける歯科医院で実際に行われた症例写真を見ることが安心感につながることも事実です。
ただ、ビフォアアフターの症例写真をホームページなどで紹介するにことは制限があります。これはその症例写真があたかもあらゆるケースで実現されるように思われる可能性があるからです。
ビフォアアフターは常に実現できるとは限らない
症例写真を示しそこでビフォアアフターを説明するなら、同時にその通りにならないリスクや、その治療法のメリットデメリットも伝えなければなりません。人間は機械のような工業製品ではありません。一人一人は皆違います。結果を完全に保証するのはむしろ無責任です。
「症例写真は個人情報」というのは、歯科治療に関しては顔がはっきりわかるようなものでない限り誤りです。しかし症例写真は個人情報ではなくても、複雑な背景を持つ情報です。症例写真にはしっかりした説明が必要なのは間違いありません。