逆流性食道炎と歯ぎしり
2020年1月7日
逆流性食道炎では胃酸が逆流して食道や口腔内にまで神龍する
口で咀嚼された食べ物は胃に送られます。胃には胃酸という塩酸を主体とした強い酸があり、食物を消化します。胃酸はタンパク質を溶かすので、本来なら胃も溶けてしまいます。しかし、胃には粘膜で守られているので、自分自身が胃酸で溶けてしまうようなことはありません。
逆流性食道炎は食事の欧米化とともに増えていると言われています。ある統計では日本人の10%、アメリカ人の20%が逆流性食道炎に悩まされるとされています。皮肉なことに胃潰瘍の大きな原因になるピロリ菌を除菌すると逆流性食道炎を発症する場合があります。これはピロリ菌が阻害していた胃酸の分泌が活発になるためです。
胃と食道の間は下部食道括約筋があり、胃酸が食道に侵入するのを防いでいます。ところが、何らかの理由で胃酸が食道に逆流すると食道は胃酸で痛めつけられてただれや炎症、さらに潰瘍が引き起こされます。これが逆流性食道炎です。
逆流性食道炎があると胸やけや口の中が胃酸で酸っぱい感じになる呑酸(どんさん)といった不快な症状が出ます。また、食欲不振やぐっすり睡眠ができないといった様々な影響が日常生活に起こります。
悩ましい逆流性食道炎ですが、最近口腔内に与える悪影響にも関心が集まっています。逆流した胃酸は酸性のため歯を溶かす酸蝕歯(さんしょくし)の原因になります。それだけではなく、逆流性食道炎が歯ぎしりや食いしばりを引き起こすことが分かってきました。
逆流性食道炎が原因で歯ぎしりや食いしばりをすることがある
これは逆流性食道炎で口腔内が酸性になると、唾液の分泌を活発化するために無意識に歯ぎしり、食いしばりを行うからだと考えられています。歯ぎしりで唾液が分泌するのは、意識的に歯ぎしりをすると唾液が出ることでも確かめられます。睡眠中に口に酸を注入して歯ぎしりをさせる実験も行われています。
歯ぎしりの原因は、噛み合わせが悪いこともありますが、ストレスによることが多く、その場合は原因そのものの解消ではなく、就寝中のマウスピースの装着やボツリヌス菌製剤の注射を行います。しかし、逆流性食道炎が引き金になっている場合は、逆流性食道炎の治療が必要です。
逆流性食道炎の治療は主として胃酸を抑える薬の処方と服用になりますが、歯科ではなく消化器内科の範疇になります。もし、逆流性食道炎があることを自覚している場合は、歯科医にその旨伝えて歯ぎしり、食いしばりの治療計画を立てることが大切です。