8020運動のその先へ
2020年4月3日
8020運動の目標は達成された
8020運動とは、1989年に始まった80歳で20本の歯を持とうという、厚生労働省と日本歯科が共医師会が共同で始めた、口腔内の健康を高めるためのキャンペーンです。成人の歯は親知らずを除いて28本ですから、20本の歯が残っているということは、80歳の時点で8本しか歯を失っていないということになります。
運動が始まった当初、80歳で20本以上歯が残っている人は7.1%しかいませんでした。70歳を超えれば総入れ歯になるのがむしろ普通と考えられていました。以来30年を経て80歳で20本以上の歯を持つ方は51.2%と半数を超えました。80歳で総入れ歯になるのは例外的になったわけです。運動は大きな成果を上げたと言ってよいでしょう。
口腔内の健康は健康な長寿につながる
これは簡単に達成されたわけではありません。この30年で定期的な歯科健診の受診者は17.4%から52.9%へ、1日に3回以上歯を磨く人の割合は13%から27%に増えました。8020運動が口腔ケアの国民の意識改革に役立ったことは間違いあり
ません。
歯科治療も大きく進歩した(マイクロスコープでの治療する歯科医師)
もちろん、歯科治療の進歩も目覚ましいものがあります。虫歯を削ってを繰り返して最後は抜歯という典型的な歯を失うパターンから、マイクロスコープやCTを使用した根管治療は、歯の残存率を高める大きな力になっています。セラミック、レジンなどの材料の進歩は虫歯の再発確率を下げました。
口腔内ケアの成果は8020達成だけではありません。乳歯の虫歯は5歳児でこの9割から4割以下に減りました。8020は全世代の口腔内の健康を改善してきています。
しかし、8020運動ですべての口腔内の問題が解決したわけではありません。小児では虫歯がどんどん減少する中で極端に虫歯本数の多いケースが見られます。高齢者の歯の残存本数が増えたことは、反面歯周病治療、定期的なメンテナンスを一層高まってます。
また、8020運動の影響で抜歯に対しての抵抗が強くなり、インプラントでより高い咀嚼力が確保されるケースでもインプラント治療を拒否する例もあります。
人生百年時代に相応しい、口腔ケアや治療のあり方をより広い国民的理解の重要性が無くなったわけではありません。また、小児の虫歯本数のバラツキに典型的に表れるように格差社会の影響は口腔ケアにも広がっています。食べることは健康だけでなく人生の喜びの土台です。8020運動の目標達成で満足するわけにはいきません。