2022年12月15日
歯科治療では、「MTAセメント」という材料を使用することがあります。自費診療となるため、どのような場合に選択する意味があるのか疑問に思われている方もいらっしゃることでしょう。一言でいえばMTAセメントは「歯の神経を残す」可能性を大きく広げた画期的な歯科治療薬です。
歯の神経を取る、抜髄は、ある程度進行した虫歯にはよく行われる治療です。神経を取ること自体は歯に大きなダメージはありませんが、神経が失われることで噛み合わせが強くなり歯を痛めてしまう原因になることがあります。また、虫歯が再発しても神経がなく痛みが相当虫歯が進行するまで気づかないリスクも出てきます。
MTA(Mineral Trioxide Aggregate)セメントは、虫歯治療中に誤って露髄(神経がむき出しとなった)場合に使用する材料で、歯の神経を保存する上で極めて有効にさ。なぜなら、MTAセメントは水と練和した後に硬化し、わずかに膨張することで高い封鎖性を発揮するからです。細胞毒性が低く、歯質の形成を促す作用が強い点も有益です。さらには、セメントが硬化する過程で強アルカリ性(pH12)を示すことから、高い抗菌性も期待できるのです。
露髄した神経を守る覆髄剤(ふくずいざい)としては、「水酸化カルシウム製剤」がよく知られています、保険が適用されるため、治療費は安くなります。MTAセメントと同じく強アルカリ性を示し、歯質の形成を促す作用や抗菌作用も発揮します。しかし、覆髄は水酸化カルシウム製剤で十分であるように感じますが、長期的な予後を考えるとMTAセメントの優位性が際立ちます。
なぜなら、水酸化カルシウム製剤はMTAセメントのように硬化することがなく、その成分が徐々に溶出していくからです。つまりは、封鎖性においてMTAセメントに劣ると言わざるを得ないのです。また、溶出したアルカリ成分が歯髄に強い刺激を加えることも珍しくありません。もちろん、MTAセメントでもアルカリ成分の溶出は起こりますが、歯髄を刺激するほどではないのです。
このように、長期的な予後に有利なMTAセメントなら、水酸化カルシウム製剤を用いた場合よりも歯の神経を残せる可能性が高まることが多いです。費用的には自費となることで数万円の出費となりますが、神経を保存したいという要望が強いとき、MTAセメントによる覆髄を強くお勧めすることがあります。
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