インプラント最前線: 即時埋入と即時荷重
2019年6月7日
抜歯後すぐにインプラントを埋入するには適応性が重要
インプラントは失った歯をチタンネジを歯根の代わりにして人工の歯を装着する治療法です。歯を失ったまま放置すると咀嚼力が損なわれるだけでなく、反対側の歯が伸びてきたり、両側の歯が倒れこむようなことも起こります。失った歯をそのままにするのは好ましくありません。
失った歯を補完するにはインプラントを装着する以外に入れ歯、ブリッジがありますが、咀嚼力や耐久性、装着感などインプラントは多くの面でもっとも優れています。ただ、インプラントは埋入したチタンネジが骨にしっかりと固着するオッセオインテグレーションというプロセスが必要です。
しっかりとしたオッセオインテグレーションを得るためには2−3ヶ月の期間がかかります。さらに、抜歯を行った時に、チタンネジを埋め込むのは2ヶ月程度は待つべきだというのが従来の考え方でした。インプラント治療の難点の一つは治療期間の長さがあります。
即時埋入(即日インプラントとも言います)とは何らかの理由で抜歯を行った時に、すぐにチタンネジを埋入する治療法です。抜歯とインプラント埋入の期間がなくなるので治療期間は当然短縮されますし、治療回数も減ることになります。
その上、抜歯後に起こる骨吸収を避けることができるために、インプラント埋入でしばしば必要となるGBR(骨造成の)の必要性も小さくなります。
即時埋入は高度な治療技術が必要
良いことづくめのようですが、即時埋入がいつでも可能というわけではありません。まず、インプラントの埋入が抜歯後すぐに行われるため、抜歯した部分の外科的な回復を考慮に入れたインプラント体(チタンネジ)の埋入が必要です。
さらに感染症のリスクコントロール、抜歯した部位の処置もより慎重に行う必要があります。これらを行うためには抜歯個所が即時埋入に適応していることと高度な治療技術が要求されます。
抜歯後すぐにインプラント体を埋入する即時埋入と似た言葉に即時荷重があります。即時荷重とはインプラント体を装着してすぐに当日から仮歯で咀嚼できるようにする治療法です。即時荷重でない場合はインプラント体埋入後カ月を置いて上部構造(人工歯)を取り付けて咀嚼が可能になります。
即時荷重も即時埋入と同様に咀嚼の負荷を早くかけることにで回復期間を短縮させる効果を得ることができます。しかし、即時荷重も即時埋入と同じようにいくつかの条件を満たす必要があります。
まず重要なのは口腔内ケアがよく行われていることです。さらにインプラント体を埋め込む顎骨の密度が高くなくてはいけません。また、治療技術も即時埋入がそうであったように高いレベルが要求されます。
即時埋入も即時荷重も実際的なインプラント施術のオプションとなったのは最近です。数多くの成功例がすでに報告されていますが、インプラント全体に占める施術割合は高くはありません。また、繰り返しになりますが治療技術の高さ、適用条件は一般のインプラントより厳しくなります。
しかし、治療期間の長さはインプラントの弱点の一つです。日々進歩するインプラント治療の中で、即時埋入、即時荷重の比率は今後増加していくと予想されます。