2020年11月29日
歯の神経と血管によって構成されている歯髄(しずい)は、単に外からの刺激を受容するだけの感覚器官ではありません。過剰な刺激が加わった際には、防御癖となる象牙質を新たに形成したり、細菌に抵抗する免疫細胞を供給したりするなど、さまざまな役割を担っています。それだけに歯髄を保存することは可能であれば望ましい選択肢です。
虫歯に侵された歯であってもできる限り歯髄の保存する治療法を専門的には「生活歯髄療法」と呼びます。また、これはマイクロスコープやラバーダムを使用する精密根幹治療のひとつです。最小限の侵襲を目指す「MI(ミニマルインターベンション)」の考え方に沿った治療法ともいえます。
例えば、深い穴が形成された虫歯では、切削処置を行うことで歯の神経がむき出しとなる場合があります。いわゆる「露髄(ろずい)」が生じると、原則として歯の神経を抜かざるを得ませんでした。けれどもMTAセメントのような有用な薬剤が普及したことにより、歯髄を保存するという選択肢も前向きに検討できるようになりました。
ただし、生活歯髄療法が適応できる症例は、一部に限られます。歯髄への細菌感染が明らかな場合は、抜髄法を選択した方が賢明といえます。歯髄を無理に残そうとすると、かえって症状が悪くなることも珍しくないからです。歯髄を残すことが常に正しい選択となるわけではありません。
歯根部が未完成の歯に関しては、例外的な処置が採られることがあります。「生活歯髄切断法」と呼ばれるもので、歯髄感染が明らかでも歯根部の歯髄だけ保存します。これは歯根の形成を完了させるためです。歯根が完成し、根尖部が閉鎖されれば根管治療も行えるようになります。ですから、厳密には生活歯髄療法とは異なりますが、歯髄の保存を一時的に行うことケースもあり得るのです。
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