歯周病に歯石を取る理由
2019年6月30日
歯石除去が歯周病予防の第一歩
歯石は口の中に残った食べ物が口腔内の細菌で分解されてできたプラーク(歯垢)が唾液の中の石灰分を吸収して石のように硬くなったものです。唾液の中には石灰分が含まれていて、そのために再石灰化という現象で虫歯を進行するのを防ぐ働きがあるのですが、逆に歯石ができる原因にもなります。
歯石は硬く主に歯と歯の間にこびりついていて、歯磨きに取り除くことはできません。どんなに上手に歯磨きをしても完全にプラークを取り除くことは難しいので歯石を取るためには、定期的に歯科医院で歯石を取ることが必要です。なぜなら歯石は歯周病を引き起こす原因になるからです。
歯周病はプラークで繁殖した細菌が歯茎さらに歯を支える歯槽骨と呼ばれる骨の土台を侵す危険な感染症(細菌が原因という意味です。風邪ように人から人に簡単にうつるわけではありません)です。日本人の歯を失う最大の原因は虫歯ではなく歯周病です。
それだけではありません。歯周病になると歯茎から出血するのですが、これは口腔内という細菌や細菌が作る毒素が全身に行き渡るということにもなります。現在では様々な病気、疾患と歯周病の関係がわかってきており、糖尿病は歯周病の合併症とまで言われています。
そんな恐ろしい歯周病を予防する基本は歯磨きと歯石除去のための歯科医院でのクリーニングなのですが、その歯石取りは不要と言う説を唱える歯科医がいます。
歯周病の程度はポケット(歯と歯の間の溝)の深さの測定で調べる
その理由は、歯周病を引き起こす細菌はプラークの中にいて、石化した歯石の中にはいない。歯周病を防ぐのは毎日の丁寧なブラッシングやフロスによるプラークコントロールで、歯石を取っても歯周病予防にはならない言うのです。
確かに毎日の口腔内ケアでプラークコントロールを行うことは必要で、数ヶ月sに一度の歯石除去のクリーニングだけでは歯周病は防げません。また、石化した歯石内部の細菌は閉じ込められていて直接歯茎を侵すことはありません。
しかし、だからと言って歯石除去は歯周病予防に無関係かというと決してそのようなことはありません。まず、歯石があるとその周りにはプラークが付着しやすくなります。顕微鏡レベルで見ると歯石の表面はザラザラしていてプラークがとても溜まりやすいのです。
結果的に歯石が付着している歯肉(歯茎)は時間が経つと炎症を起こしやすいことが確かめられています。歯石は歯周病予防に除去すべきなのは間違いありません。
日常の歯磨きももちろん大切
歯石は歯肉の表面に付いているものは通常のクリーニングで取ることができますが、次第に歯と歯茎の間に付着していきます。歯肉の中深くにこびりついた歯石は、SRP(スケーリングルートプレーニング)という徹底した歯石除去、場合により石灰して歯石除去を行うフラップ手術で取り除く必要があります。
SRPやフラップ手術で歯石を取り除くと(フラップ手術で歯周病に侵された部分の歯肉も除去します)、歯茎が引き締まり歯周病の症状も改善します。歯石除去が歯周病治療の基本です。
定期的な歯石除去だけで歯周病を防ぐことはできず、毎日の口腔内ケアが大切だということは事実です。それでも「歯石除去は役に立たない」というのは俗説というよりデマに近いと言って良いでしょう。そのようなことを言う歯科医がいるのは残念なことです。