2020年7月16日
病気には、親から子へと遺伝するものがあります。遺伝性疾患と呼ばれるもので、異常のある部位が一つの遺伝子、あるいは染色体の数や形態によってさらに細分化できます。では虫歯は遺伝するでしょうか。
結論からいうと、虫歯は遺伝性疾患ではありません。虫歯の発症リスクを著しく上昇させる遺伝子等は今のところ見つかっていません。ただし、虫歯のなりやすさはまったく遺伝しないと必ずしも言い切ることはできません。なぜなら、親から引き継ぐ体質や歯質によって、虫歯になりやすくなることがあるからです。
例えば、唾液腺の機能に障害が現れる遺伝子を継承した場合、子どもの唾液分泌量も低下します。唾液には、殺菌作用や抗菌作用、自浄作用といった口腔衛生を保つ上で、非常に重要な機能が備わっています。そんな唾液の分泌が生来、低下していると虫歯のリスクは上昇します。
歯質に関しても同様です。歯の構造自体は万人に共通していますが、エナメル質の石灰化度や厚さなどは、遺伝によって左右される部分もあります。見た目は健常であっても、むし歯になりやすかったり、その進行が早かったりする場合は、歯質に問題があるのかもしれません。
歯並びもまた遺伝と関連することがある要素といえます。親子の顔が似るのは、骨格の一つである顎の大きさや形などが親から子に遺伝するからです。つまり、歯を並べるためのスペースは、遺伝的に決定される部分があります。出っ歯や叢生、八重歯といった歯列不正が親子で共通しやすいのはそのためです。そして、歯並びの乱れは、虫歯や歯周病のリスクを上昇させます。
しかし、虫歯自体が遺伝するということはありません。虫歯は一種の感染症で、口の中の虫歯菌が糖分を酸性化するために引き起こされます。そして虫歯菌は大部分が、親子の間で感染します。食器の共用や食べ物の口移しを徹底的に避け、3歳くらいまで、虫歯菌を子供の口の中に移すことを防ぐと、その後は口腔内の虫歯菌は一定以下に抑えることができ、虫歯になりにくくなります。
虫歯菌に感染しても、甘い物をあまりたべない、歯磨きを励行するといった生活習慣に気を付けることで虫歯リスクを小さくすることができます。親子の間の虫歯菌の感染を防ぐのは難しいですし、遺伝的な要因はあっても虫歯の原因の一つに過ぎません。口腔内の状態を良好に保つ生活習慣を作ることが子育てには一番大切です。
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